舞台に大きな歩幅で足早に登場
赤いドレスの足元は、はだし。
音楽がしっとりとした曲の前には
ワンテンポ、上を向いて、
やがて、なめらかに
鍵盤の上で指が踊る
譜面がない、すべて暗譜
作曲家とのやりとり
音をつむぐ
聴いていて次第に
こちらも覚醒
彼女の勢いが感じられて、
聴けてよかった。
アリスサラオットは最後、
なみだ声で
「涙で鍵盤なんか見えなかった
あしたから被災地を回る
みなさん頑張ってください。
あのとき、行ったことのある仙台空港が
津波に流されたりするのを
移動中の電車のホームでテレビで見て
その日ウイーンフィルとの演奏でぼろぼろ泣いた。」
音だけではなく心情を重ねて
こちらもまた
けれど、勢いのある、強いタッチのピアノが
心に勇気をくれたこともまた確かに。