探していたわけでもないのに、中古の商品と出会ったとき
はっとする思いに駆られることがあります。
今回は負けました。
ともに生きた時代の機械。
これがとてもいいものなのに、ただ古いというだけで、哀れな価格。
音は出るけど、それが正常かどうかということはわからないという。
ただスピーカーはめったに壊れないし、
壊れても同じ気持ちで昔のものを大事に直してくれる技術者がいることを知ったので
いまや古い、いいものほど半永久的に使えるという安心感がぼくにはあります。
客観的に、オーディオ全般勢いがあった時代のものは大きく重く
ただいい音をと追求し、本物の情熱をこめて作られたもの。
買ったのはソニーのSS-G7というスピーカー。
その時期、日本では、ヤマハ1000Mがスエーデン国立放送局に採用された
ということで、それっと、1000Mブーム。
その二年後に
登場したなんというかある意味不幸な生い立ち。
その陰に生まれたことに加え、1000Mのベリリウムと比べ
特に目新しい素材も使っていない、ただのコーン紙。
けれど、これ、埋もれた日本のオーディオの歴史そのものなんです。
2S305というNHKモニターを三菱電機と共同で作った
中島平太郎という技術者が、ソニーに入り
潤沢な資金を使い、コーン紙をつくる工場から立ち上げ
作ったという、しかも、紙をすくのに笛吹川の水が
一番音が良かったからという理由で…。
カラヤンが、しばらく聴き入り、
わたしのレコードはこのスピーカーで
聴いてほしいと、言ったとか、こうなるともう伝説的。
そういう伝説が目の前に、ジャンク扱いで売られていたら
欲しくなるじゃないですか。
部屋いっぱいあるし、昼も夜も大きな音で聴けるんだもの。
同じように買ったこのひとに同感。
以下、参考にリンク。
http://ameblo.jp/k-kichi/entry-10843223800.html
http://ameblo.jp/k-kichi/entry-10837600810.html
http://ameblo.jp/k-kichi/entry-10906955112.html
http://members3.jcom.home.ne.jp/cine/12-sony.html
http://www.niji.or.jp/home/k-nisi/g7.htm
http://blog.goo.ne.jp/parc-audio/e/5bde6c6dcb97ff34b41feb2e716c2d6b
http://itsouken.exblog.jp/15852278/
ついでに、自作スピーカーの項で、音楽でないとスピーカーのエージングにならない、
機械音ではダメとプロが言っている、ということを、先日書きましたが、
ソースはこの中島さんです。あ、ぼくは特に中島ファンではありません。
なんかね、設置して、第九など聴いて思うんですが
これつい最近までこのスピーカー大事にされていたような気がするんです。
取説もあるし、サランネットもきれいで
邪険にいくつもオーナーを渡って来たというものを感じないんです。
音も安心して包まれる感じがするしいいなあ、と思うんです。
単純に、いいものを持ってうまれてきたスピーカーだと。
ステージがただそこにぽっと浮かぶ。
メートル原器ならぬ 放送基準の音の原器という気すら。
オーディオって、リアルの追及だと思っています。
リアルな現実を目の前に浮かび上がらせること、
そうでないと実際、演奏している人に失礼、
本は文庫本では、違う、
絵は写真印刷では違う、
あくまでも本物を追い求める、その姿勢が
芸術という背中を追い求める作業そのものだと。
ならばできるだけ、本物の情熱を傾けた作品である装置で再現したいと思っています。
時代がふるくても色あせないもの。
修理して大事にしようと思います。
先人の賜物。