うさぎとピクニック

うさぎと、自転車、田舎での日々

勝手なつぶやき

風雪のビバーク

 そのあとも高揚感は続き、かく覚醒した自分を感じて
このままどこまでも走れそうになっていました、せっかくなので行けるとこまで
突っ走るー、温泉休憩や仮眠なんぞ、もったいないめんどくせー
と通過したのが間違いのひとつ。

これはなにかもしかするとあの岩盤浴効果(にしたら効きすぎる)か、
あのビタミン剤か、ひたすら黒い路面に濡れながらも矢島を目指します。
なんとなれば坂を登れず押さなくてはならないのだから
来たるべきその場面目指してがんばって突き進めいけいけ自分。
とはいっても凍結の可能性については、つねに頭の片隅にあり、
曲がるときもそれを気にかけてたのでまったく忘れていたわけではないんです。

仮眠候補としていた場所のひとつ、矢島手前の鮎川駅に向かいました。
住宅地の中にあって、そこがなんかね、ちょっととか
そういう気持ちが出た時点でダメですね。
いい場所でしたが真っ暗で、扉を開けてのぞいてみると、しっかり断熱されていて
ほんのりあったかくて気持ちいいの。
でもちょっとちょっと泥棒みたいで…。
この駅です

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まっくらの中、ひそひそ潜り込むと怪しい人



度胸も疲労感もまだなかったので、次の候補である道の駅まで
向かうことにしました。
まあこれも失敗といえば失敗、突き進んだ時点でもうすでに。

もう少し遅い時間だったり逆に、早い時間なら違っていたのでしょうけど
まず最初、ライトの点灯範囲に突然現れた踏切に気が付かず
斜め鉄路に乗った雪(氷?)でずるっと横に滑りいっきに転倒しました。
このときはまだ意識の中で瞬間滑ったとわかる転倒。
にしても、頭を打ったせいでしばらく起きれませんでした。
腰も打ったのですがほとんど痛みを感じない、右側の筋肉のほうがあるから?
と思ったのですが、のちのち考えてみると
もともと痛み止めの薬を飲んでいたせいでしょう。

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油断大敵、好事魔多、踏切一時停止

ダメージがあるようではなかったのですが、直後は脳震盪状態で
起きれずそのまま寝転がっていたら、クルマの音が聞こえてきました。
心配かけるといけないなと、よろけながらも立ち上がります
行きかうものは旅人の仲間同士というような気持の深夜の田舎道。
…のつもりでしたが速度落とさずびゅーんと行き過ぎる車の
後塵の風だけ受けて、散りながら追う雪になった心でした。

次はもう線路はないだろうと、いや二度あることは三度ある?と思いつつ
それなりの速度でまあ走っていたところ
10分くらいかな、30分かな、よくわからないのですが
まっすぐの道でいきなり、つるごちん。
フロントが今度はいきなり道路に足払いされたかのように、転ぶという瞬間を
感じないまま道路にたたきつけられました。
ごちんと頭から落ちたあと、腰を打ち、肩も打って
さっきよりいきなりだったのでより直接痛みを感じました。
バキッと、ヘルメット割れた音がした気もしました。
(確認すると凹みのみ)
直後に頭痛、ああ、だめだこれはと、なにかをひとつあきらめて、
よろよろ立ち上がりはしたけれど、今度は歩くことにしました。

ブレーキをかけてフロントを動かすと、つーと何の抵抗もなく横に滑る
こりゃ無理。
まったく凍っているようではなくただ濡れている路面、
気温も寒いとは感じないのに、凍っているんだ…
時計を見ると深夜二時近い。
どこかバス停とか無いかと押していたらと20歩ほど歩いたらまた、転びました。
今度は歩けず自転車ごと倒れました、
自転車のサドルに背中を打ち付けたのか、激痛。
腰から背中にかけていちばんの痛みがきました。
ひねったり曲げると痛い。
これはもう、ビバークを決めました。
もうだめ、歩けもしません、
緊急野営です。歩くこともままならず、慎重に慎重に。
ゴム付きクリートなのに滑るので濡れる雪に中をわざわざ歩きます。

もうこれは山の危険度レベル。
とはいえ、一度却下した前述の駅舎や温泉に引き返すという安直な選択肢はないんですな。
自分、あくまでなにか妙な挑戦をしたがるせいなのか
いま置かれた状況の中でどうこうするという発想のせいなのか。
これはもうニワトリというより3割頭。

とにかくいくらか雪がありグリップの効く歩道を慎重に歩きながら
場所を探しました。すこしでも先に進みたいという心理。
晴れていれば数十秒のところ押し歩き、あれアベレージも1キロ2キロ落ちていく。

100メーターほど行くともしもしパーキングがあり
トラックがアイドリングして止まっていました。
中はあったかそう。

その横に歩行者用のトンネルがあったのでなんとなくそこにしました。
冷たい風が吹き抜けてはいきますが、屋根があるのとないのとでは気分的に大違い。
シートを敷いて、シュラフ一式支度して横になります。
痛いこともあり、気が付くと寝る前なにもしませんでした。
薬もトイレも補給もせず、シュラフの中に入りました。
とまったら急に汗か冷え、寒くてがたぶるです。
道が凍るということは2度以下のはず(サイコンデータ見ると最低-1度でした。

そのまま眠りに落ちました、と言えればいいんですがこれが
ハイ状態は続いていたのでさっぱり眠くならない。
頭痛に加え、気持悪くなってきて、吐き気もしてきました。
むち打ちみたいてせ首も強烈に痛い。寝返りもしんどい。
痛み止めを飲んでいて、これだから、あと
とにかく動かずいることしかない、眠れなくても
安静に朝を待とうと思って、休みます。

映画ではよくこういうとき野良犬とかに襲われたりするなあ
とか、
トラックのドア叩いて、寒いので中に入れてくださいと言おうかなとか
妄想しながら、それなりの寒さのなか耐えます。

それでも多少の吐き気と頭痛程度で、コンクリートの上は冷えましたが
尿意などなくそのまま朝まで耐えられたのは良かったです。

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無事朝を迎えられたことだけでもほっとしました

少しうとうとはできて、気が付いたら朝七時半夜明けでした。
朝は待っていたけれど、だからと言ってすぐ氷は解けないだろう、
国道なのに、塩もまいていないみたいだったし、ここはまだ平地、
この先はさらに高度も傾斜もあるということを考えてこの後どうしようと
寝ながらしばらく考えました、

ここまできたのだからなんとしても500キロは走りたい
戻るしかないにしても、関山越えられるのか?
新しい国道だと6%程度までの坂しかないはず。
6%表示のあるここまでの陸橋で登ってみたとき
ぎりぎりその長さならダンシングなしで登れたから
山形側なら問題ないはずだけれど
来た時の雪が凍っていたら登れないあの長さを押し歩くのは大変だな…。

 

取捨選択、目的は距離。
引き返すという選択をし脳内であらたにルートを組みなおしました。
帰宅に運賃の安いルート。余目からでもいいけど
そこまでいくなら時間も電車はかかるし、もう少しがんばって
新庄まで、そこまであと130キロくらいなら凍るような道もないから走れるんじゃ
ルートをナビしてみると、新庄だと500キロに満ちるようでした。
そうだ好きな道じゃないけど遊佐までもどって戸沢経由で帰宅するルートを
進むことにしました
ようし、と新たやる気。

ルートラボに入れていないので、スマホの自転車ナビで
途中まですすみます、初めて使ったけど、
おもしろいなこれ。

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鳥海。下は紅葉、上は冠雪

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遊佐のふらっとで、肉そば、久しぶりにちゃんとしたもの食べた、染みました。


飽きるので好きじゃない川沿いのバイパス道から離れ地元のくるまがこない
神社仏閣があるところを通る。ひとの歴史の匂いがする。
これぞサイクリング、すいすいと地元の人に案内されているみたい。
安心が担保されつつ迷い込むというのは楽しい
向かい風だけど、もうあそこまでというもくひようができたから頑張れる。
気が付けばおしりが全然痛まないぞ。
どしてかなと、考えるとひとつは
パッドが固く薄いイタリア製EF DESiGNのせいでしよう
薄いパッドなのに、触るだけではわからないなにかこしがある。
もうひとつ買おうかな、と思ったけど、探しても見つからない…。
高いからとあまり着たことなかったんだよなあ
すこし脇に穴があいちゃった。

 

苦手な道も慣れたのか今日は快適
最初に通った時、疲れていてへろへろで登った坂もなぜか今日はすいすいだー
と登っていたら、追抜いていく車の後部座席の男が窓を開けて
なにか叫んできます。
な。なに
びっくりした
「あしもっと回せぞー」ってなに。
回したくても回せないよと心の中で言い返す。


県道か国道34号を行く中で道がよくわからなくなり、
山の中でおじさんに聞きました。
新庄駅は?
まっかぐいって右という案内をもらい、どこから来たと聞かれ
少し会話。ああなんか懐かしい感じだなこれ。

あと、なんとなくこっちが年上だと思うのになぜか年下に対する言葉みたいなのもらうのなんで?という…いままで感じたことない違和感、嬉しいんですけどね。

まだ先なのに駅が見えてきて、距離が少し足りなかったのでUターン、数キロ確保して、500キロ達成。慎重にレザインサイコンのログを「保存」しました。

新庄で切符の買い方に難儀した。
というのは、券売機での目的地へのいちばん早くつく電車の買い方、乗り方がわからず若い駅員さんに聞いたら、妙に丁寧に教えてくれた違和感。
意外に新幹線ではなく普通各駅列車のほうが速かったので、安く済んでよかった。

いつも駅前で自転車を輪行袋にしまったりだしたりするときに思うのだけれど
だれか見て。
ほらこんな袋に自転車が入ってこれから普通に電車ぉに乗るんだよ、
もしくは、逆。
すごいでしょう、今から10分もかからないマジックショーだよ
見て、
と思う。
…、と思う。
(しーん)
ひとりショーの後、時間まで、レストランで休みがてらカレーライス食べようとしたら、瞬間でなくなってしまった。
お腹減っていないと思ってたのに、ご飯もカレーも噛まずに飲んでた。

 

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記憶のレシート



レシートは自分にとって、記念であるけれどメダルでもあります。

帰宅して、ストラバ上げたらデータが前述のように飛んでなくなっていました。
500キロの間のさまざまな記録はしているので良かったけれど
地図の線がない。いろいろ故障が多い今回のライドでした。
レザインって湿気に弱いな、湿気の多い時充電仕様と防水パッキン開けとくと
いつかも同じ状態になったことを思い出しました。

 

今日の名作。走っている最中唐突に原田貴和子のシーンを思い出したので。

 

君のために帰ってきたよ

 

来年は600キロ。