HEAVENというコミック漫画のなかで
自信がないときは薄味で
自信があるときは塩多めの味付けというフレンチシェフがいたっけ。
【前菜】
それはともかく。
このふる里という岩手の旅館。
食事にもっとも驚いたのでした。
いつも食べ物を食べて謎解きをしては
がっかりすることばかりなので、
この料金で期待などするほうがおかしいとつい、邪推をしてしまってました。だいたい、夕食に山のなかで海鮮鍋ってどうよ、みたいな。
【米なすのグラタン】
正直、多少感情もはいるけれど、旅館で食べながら
涙腺がゆるんだのは初めてのことでした。
例えばそれだけでもおいしいものをほんの少しだけ味に違いがある、
甘いものと、少し甘くなくて酸っぱいものと、酸っぱいものとなどを
帯のようにと組み合わせたりという、繊細さ。
全体的にも味がくどくなく、主張しない薄味で、これはよほど味に自信があるのかと。
【秋のゼリー寄せ】
いや、むしろ料理長、できるのに、
たぶん自己評価が低く自信がないんじゃないかと思ったり。
ただ、食べ手への愛情を感じ、こちらは作り手への尊敬と愛情という想像力が膨らんで行くなかでやはり
工夫してよりおいしく感じて欲しいというのを皿のひとつひとつ手抜きのない真摯な姿勢を感じてほんとうにありがたいものを頂いている感動。
【兎の餅つき】
料理を持ってきていただく賄いさんに訪ねると
3か月ごとにテーマとメニューを考え、試作ができるとみんなで
試食をして、器や味の意見を言って作っていくのだそう。
なるほど、ひとつだけでも皿の全体のバランスでももう素敵で。
正直、ここまでされるともう
まいりました。降参です。
何気ない品でしたが、きゅうりとオレンジの品は泣けました。
そして、これはまた
朝ごはんにも続くので、もう本当に参りました。
これ一万円の宿の食事ではないです。
ほんとに宿代が平日サービスだったようです。
(値段の差は、食事で差をつけているとこが多いです。)
ここほどではないにせよ銀河高原ホテルもよかったので
岩手の山の中の旅館恐るべしです。