うさぎとピクニック

うさぎと、自転車、田舎での日々

勝手なつぶやき

時計屋さん

1or161651 オークションで安く買った時計のベルトが
まったく調整されていなかったため
「時計のベルト駒はずし具」などというもので調整しようかと
機材をネットで探したりしていました。

やり方や道具などいくつもあり調べているうち、これはやはり時計を売っているところで
相談すべきと思い至りました。
そして、ホームセンターやショッピングセンターのなかで探したものの、
…対応してもらえず。

それからそういえば時計屋というものがあるではないかと
敷居が高くて存在を忘れていた、時計屋さんを探しました。
大通りにはなかったので休日時間をみて、散歩がてら
昔からの商店街を歩きはじめたら

あっけなく見つかりました。
それは、宝石と時計屋さん。
女性が忙しそうに働き、奥のほうで、おじいさんが
暇そうに新聞を読んでいました。

おじいさんより1メートル手前にいた女性に、これこれこうと伝えると
台に乗せ1メートル後ろのおじいさんに恭しく(うやうやしく)、
これごれこうで、お願いしますと、伝えます。

おじいさんは、まあここにどうぞと、
傍らのいすに座らせ、
時計と、ぼくの腕をとりました。
いろんな角度からベルトを眺め、ふうむとつぶやき、
いろんな形の工具を古い木製の引き出しから取り出します。
それから、ゆっくりと、あれやこれや
工具を使ったり、しまったり、時計片手に
みたことのない動作を繰り返します。
計ったり、さしたり、抜いたり、ひっくり返したり
あわせたり、それはゆったりとなにか、
一連の演奏でもしているかのように
優雅で。静かなアダージョのようで。

およそ時計のベルトなんて、簡単にぱっぱっと調整して
はい終わりかとおもっていたぼくは、ちょっとその動作の
ゆっくりさと、確実さと、丁寧さに、待たされるいらいらもなく。

おじいさんが作業をしている間、女性はじっとして
作業の邪魔をしません。あまりに店内は静かです。
かちこちとも音がしない時計屋さんは100年目で
商工会議所から表彰されたようで盾がかざってありました。

入り口からおくまでのショーウインドウは、ジュエリーです。

そんななか、おじいさんは、ぼくの安く買った時計のベルトを一生懸命
調整してくれています。
ふたつ、つめたら、もう少しかなと、腕をとり
あわせてくれます。その様子は今度は
まるで、ぼくの具合を診てくれるお医者さんのよう。

なんだか、うっと
感じ入るものがあり、涙がこぼれそうになりました。
きっと誰もいなかったら泣いてました。
おじいさんはそんなぼくをみて不思議そう。
日々の慌しい仕事の中でいつしか、がさついていたのでしょう。
なにか昔ながらの生き延びた時計屋さんのレトロな
作業で、もとに、なにか治されるような錯覚すら起こしました。

早速時計をはめています。つけごこち最高です。
時計じゃなくて、ベルトをしていたい気分です。
あのおじいさんが、ぼくのために調整してくれた
ベルトは世界で、ひとつだけです。

エレガンス荒井