うさぎとピクニック

うさぎと、自転車、田舎での日々

勝手なつぶやき

にんじん3

あたり一面、背たけよりも
高い草で覆われた、藪の中から
ぱーんっと、はじけるみたいに
みんなが飛び出ました。
なんにもない、広々とした、
みんなのにんじん畑。

満月に、葉っぱが白く輝いています。
少しの風もなく。

「いよいよついたねぇ。」

ぽんちゃんが、くまちゃんの耳元でいいます。
「ぼく、にんじんのはっぱがいいな。」
うんうん。
じゃ、おりよっか。

んっしょ。
ぽんちゃんがぎゅっとつかんでいた耳が
ちょっといたかったけど
くまちゃんは、なんにもいいませんでした。
そのかわり、
「みんなでまた来れてよかったー」と
ぽんちゃんに言いました。

ろんちゃんは、よーしよーし、といいながら、
自分の背丈とにんじんの葉っぱを比べています。

ほーらー、こないだは、ここ、
ここ、ぼくの鼻のとこだったんだよ、
いまはここまで、ここまでのびてるよ
両手で、耳をピンと上に伸ばして、
にんじんの葉っぱと、耳の高さを比べました。

それわみていたまふちゃんが、
「すごーい。」
じゃあ、にんじんは、どうかなぁ。
にんじんを掘りはじめました。

もう、まふちゃんだけじゃありませんでした。
みんなが、ほりはじめました。
もう勝手に、好きなとこをほりほりほり。
耳を引っ張って草と並んでいた、ろんちゃんもあわてて
ほりほり。

「この色がいいし、この葉っぱから出る
香りが、掘ってっていってるよー。」
と、まふちゃん。

「小さくてやらかいな。これがいいな。」
と、ぽんちゃん。

「なにいってだよー、でかいのがいいんだよ、
とにかく葉っぱのおっきいのが。」
と、ほりほりろんちゃん。

「あ、にんじんにぶつかった。」
「あ、またにんじんにあたった。」
ひたすら、にんじんをよけて、ただ掘るのに夢中な、
くまちゃんは、今日も、
にんじん畑横断道路、をつくっています。

ほりほりほりほり、ほりほり。

みんな、月明かりに照らされ
静かに、ほりほり。
ほりほり。やすんでもぐもぐ。
くいしんぼまふちゃん
ひとりだけ、もぐもぐしながら、ほりほり。

ほりほり、がぶっ、もぐもぐ、ほりほり。
もぐもぐ。

地面の下で、くまちゃんの道と
まふちゃんの道が、交差しました。

まふちゃん、真っ直ぐ掘るのをやめて、
にんじんくわえたまま、くまちゃんの道のあとを追いかけていいました。
「くまちゃん、これ、食べて。
いっかい噛んでちぎったから
たぶん、くまちゃんも食べれるよ。ほら。」

「ぼく、いいよ、にんじん嫌いだもん。」

「食べて。おいしいよ。」

きらきらした目で差し出されたので、

「じゃあ。ちょっとだけ。」

くしゅ。しゃり。固い部分をかみ崩してくれてた
おかげで、にんじんなのに、固くない。
シャーベットみたいに、しゃりしゃりもふもふ食べられます。

「うあー。これがにんじんっていうの?」

おいしいよー。
おいしい。
うんおいしい。
とってもおいしい。くまちゃんにんじんに夢中になりました。

まふちゃんもにこにこ。
おいしいでしょ。

うん。

「えーと、ぼくね、はっぱが好きなの。」
ぽんちゃんと、ろんちゃんの道が
土のなかで、交差して、ろんちゃんがぽんちゃんのあとを
追って曲がり、トンネルを大きくしながら、進みました。

ほらよっ。
力持ちのろんちゃんが、下から
思い切り引っ張ると、1本のにんじんが
すぽっと上からトンネルに抜け落ちてきました。
「ほら。葉っぱ。地面の中だとないもんな。
好きなだけ食べていいんだよ。
なにしろ、今日はにんじんバイキンクだから。
ぼくは上を向いて、にんじんのいちばんおいしい
とこかじり放題だけどねっ。」とろんちゃん。

満月の光の届かない、地面の下
ろんちゃんのあとを、ついていくぽんちゃん。
ほらよっ。
また抜いてもらいました。
すぽん。
もぐもぐ。

かみかみ。
はいっ。
ありがと。
くまちゃんは、まふちゃんにお礼をいって
初めての幸せな味をかみしめていました。
掘るよりも、楽しい事って、あったんだねぇ。

うん。

みんなはそれぞれ、なんだか幸せでした。

二つのトンネルが、交差して
みんなが土の下で、出合いました。

「満月のときじゃなくても
こうしていたいって思ったら
だめなのかなあ。」
くまちゃんがいいました。

ほんとだねぇ。
みんながいいました。

いつも、こうしていられたら
いいのにね。

みんながそう思えばいいんだよ。
いちばん大きなろんちゃんがいいました。




…いちおう、これで終わりかなあ。
と言う感じです。

先の展開考えず、自由にかけて楽しかった。