無性にいらいらしていました。
ひとの言葉のひとつに。
自分の中のひとつの思いに。
自暴自棄で車を走らせ
たどり着いたそのとき、
思いだした言葉があった。
「ああ、かっこう、あのときはすまなかったなあ、
おれは怒ったんじゃなかったんだ」
ずっと長いこと、意味がわからずにいました
このことば。怒ったんじゃなくて、
怒ってたって、いったい。
「セロ引きのゴーシュ」
中学生のころからずっと抱えていた
その絵本のなかの言葉と世界が、
ふっと自分の中に入ってきて溶けた瞬間。
宮沢賢治が最後まで推敲を重ねたと言う
思いいれの作品。
物語の中で、うまく弾けず人の後をついて弾くばかり、
なかなか自分を出せず、とまどいつつ、
いらいらする主人公。
感情をぶつけて、感情を吐き出し
やがて感情の豊かさ、他人を理解。
そんな浅いことではないのかもしれないけれど
ふっと、理解できた世界をいまはただ
うれしく思うのです。